第六章 本筋って(略)目明し編(版権違い)☆
パーティーメンバー
アリス :名目上の伝説の勇者(不名誉)
エース :騎士(剣中心)
エリオット:離脱キャラ(銃中心)※離脱中
ユリウス :巻き込まれ属性(マスコット)
「誰がマスコットだ。一撃必殺してやろうか?」
ユリウスは額に青筋をビキビキと立てるという、新しい芸をご披露し、そのまま黙りこんでしまった。
「そうねぇ…とりあえず、パーティーって三、四人揃えばいいのよね?」
「そうだな。定番の人数だ」
「…じゃ、あと、四時間帯しかないし。ラスボスに向けて出発ってことで」
「…正気か?」
先程までふつふつと怒りを滾らせて、むっつりしていたユリウスが、思わず口を開いた。
「お前、ステータス見せてみろ!」
「嫌。ユリウスのすけべ」
「なっ!どうしてステータスを見ることがスケベなんだ!」
「乙女の秘密よ」
「乙女ってキャラかお前がぁぁぁっ!」
対ユリウス好感度はゼロを通り越してマイナスになったかもしれない。
「仕方ないわねー…知りたいことがあるなら、答えてあげるわよ?」
ユリウスが怒りのあまり、酸欠を起こしている。ぜいぜい言いながら、それでも冷静にアリスの現状の装備や持ち物、レベルなどを聞いてきた。
アリスが答える都度、ユリウスの眉間の縦ジワは深さを増し、遂には鼻筋に皺まで寄せるといった乙女ゲーキャラにあるまじき顔をしはじめた。
「お前は…全滅がしたいのか?心中願望アリか?そういうエンディングが見たいのか!?私は巻き込まれるのは御免だ!第一、ラスボスまでの道のりは端折れないだろう!使っていないアイテムどころか、手に入れていないアイテムだらけだ!レベルだけなぜそんなに高い!どこをどうチートしたらそうなるんだ!?」
「ユリウス、肺活量が素晴らしいわ」
「だあああああっ!!」
頭を掻き毟りそうな勢いで、ユリウスは怒りを全身を使って表現する。
「ユリウスの言うこともわかるんだけれど…ラスボスへ直行したければ、猫君を捕獲…もといお願いすればいいと思うよ」
相変わらずの笑顔のまま、エースがアリスに余計な知恵を付ける。
「そうなの?じゃ、解決ね」
アリスは晴れ晴れとほほ笑んだ。
「…お前、もう少し長生きしたいなら、疑問に思え。エースの言うことも疑ってみろ…」
「伝説の勇者やるだけで、精一杯の忍耐力を使いきっているのよ!これ以上は無理っ!」
アリスはきっぱり答えた。
常ならばアホかとツッコミが入るところだが、アリスが余りに堂々としているので、ユリウスの方がたじろいだ。
ぎゃーぎゃーと三人騒いでいると、ふわりとお姉さまな香りが漂ってきた。
「…何じゃ?珍しく騒がしいのう…?」
ひょこりと顔を出したのは。
「…正解は1…」
「1だな…」
「1ね…」
異口同音、三者三様に唱える。
「何じゃ!人の顔見るなり、イチだとか。わらわはそのような名前でも役でもない!」
「わぁ陛下。いつもは理不尽なのに、とても常識的過ぎてぐうの音も出ませんよ。まいったなぁははははは」
「…お前の首と胴が泣き別れになる日を夢見ているのに、なかなか適えられんものだな」
「陛下…悪趣味なのは存じ上げておりましたが、そんな夢ばっかり見てるんですか?部下として、それはどうかと思いますよ。お体労わってお忍びも含めてイロイロ自粛なさったらいかかですか?」
「…エースよ…部下がきちんと仕事をこなすことが、上司をを労わることになるとは思わぬか?具体的に言うと、お前が城に戻り、自分の仕事をするとか」
「思いませんねー!はははははっ」
殺伐とした上司と部下の会話を聞き流しつつ、何事も無かったかのように仕事机に戻りそうなユリウスを、エースとアリスはがっしり捕まえる。
「は、放せ…」
「駄目。フラグは立ったんだから!」
「あえて言おう、そんなフラグは折ってやる!」
「…ユリウス。往生際が悪いぜ…」
「何じゃお前達。新しい遊びか?時計屋なぞを緊縛したり、監禁したりしてもそれほど楽しいものではあるまい…」
「慈悲なの?ビバルディって優しいのね…」
アリスは美人に甘い。うっとりした視線を向けると、ふふふとビバルディは楽しげな笑声と共に、耳を疑うような言葉を続けた。
「うむ。実はな。こやつはアリス、お前の冒険において、仲間になった後攫われる運命でな」
「陛下ーネタばれはよして下さいよー…」
「良いではないか、このようなゲーム、この子も早く終わらせたがっている。わらわが強制進行してやろう」
「待って!」
アリスが悲壮な顔で叫んだ。
「お前…………あ、安心しろ。…私はイベントで一時戦線離脱するだけだ。心配は要らない。だからお前は自分のゲームを進行しろ…」
そんなアリスを見て、ユリウスは頬を染めて言う。
しかし、世の中そんなに甘くない。
「ユリウスうるさい!何勝手なこと言ってるのよ!離脱するなら、レア装備置いていってよ!ほら、脱げ!」
「きゃーいやっ!止めてぇぇぇぇ!」
「…アリスってこんなキャラでしたっけ、陛下?」
「それより、わらわは時計屋の悲鳴がどことなくそっち系なのが気になるが」
…ホントだな。
続く
■なかやすみ
処刑人を前に、埋めて逃げようかななんて、命知らずな発言はギャグでしかさせられない…
初出日
2010/07/02 Faceless@MementMori