盤目の支配者が変わる。
少女が、これを駆け抜けたから。
意味を為さない時計の針が重なる時、デタラメな数の鐘が、デタラメな時を謳う。
少女が、これを駆け抜けたから。
女王が愛した、赤い時刻が終わる。
少女が、これを駆け抜けたから。
装束の裳裾をついと捌き、階段を登る。
13段目で、その白い首筋を風に曝す。
「わらわが愛せる穐が終える。わらわは愛を手に入れない。わらわは愛を手に入れた」
かちゃかちゃと拍車を鳴らして、男が階段を登る。
13段目で、そのイカれた帽子を小脇に抱える。
「私は、夜を愛している。私は全てを塗りつぶせない。私はまだ、夜を手に入れていない」
長い裾の上着を翻し、階段を下る。
13段目で、支配する残像に影を消される。
「くだらない……私は仕事をするだけだ、私は管理を続けるだけ」
伸ばした編み下げを軽快に揺らし、階段を下りる。
13段目で、奇術のように視界から、消える。
「傷ついた顔、していなければいいんだが」
頬を彩る銀髪を揺らし階段に現れる。
13段目で、ひとつだけ開けた瞳が何かを捉える。
「追いたてられる、夢を見た。夢魔たる私が……」
三人の声が交差する。
「この記憶は幾つ数えさせる気かの?」
女王が飽いたとばかり。
「さあ……次の支配者(ゲームマスター)は、少なくとも私ではない」
帽子屋が、気取った調子で続ける。
「…帽子屋。お前のような泥棒破りが、ゲームマスターになぞ、なりえるものか…」
華やかな黒装束を身に纏った線の細い男が言葉と共についと現れた。
「……夢魔、お前がそれを言うか?」
暫しの沈黙の後、伏し目の女王が大儀そうに唇を振るわせる。
いつもならば、彼も食い下がる。しかし、今夢魔は上機嫌。
「さてさて、皆様、ようこそご覧あれ。あれに見えるは我がクローバーの国」
気取った仕種で虚空を指す。
「……ああ、では時計屋は引っ越さぬのか…やれ、わらわの時計はまだ壊れたままか…」
END
「不親切なの、一本…」
書いて放置してたやつ。タ=ビニ=デ=タラ=ワスレター(ロシア人とコンゴ人のハーフ1950-2010 偉業とか特になし)
タイトル付けて収録してみた。大地さんのチャットで初出。
タイトルは今日つけた。何の捻りもないが、これに捻りは要らないなと。
皆様、キラキラのお宝を放出してくださったのに、わっちはこんなんで申し訳ない…
雰囲気たっぷりの絵をお持ちの方に漫画で描いて欲しいネタ。
ハートの国からクローバーの国へのお引越しの寸劇です。
ゴーランド難しいよ!
Faceless@MementMori 02/04/2010