第二章::今度はLサイズ。

「もう嫌だー!!!」
「・・・うるさいからさ、アリス。でかい図体になったら、発声に気をつけようぜ。」

 ちょうど、座してロンドン塔サイズ。いっそ、もっと圧倒的だったら良かったのに。

「ああ、アリス・・・大きいあなたも素敵です。」
 こんな時、ペーターは狭量ながら、猛者だと周知さらしめん。

 ちょっと身動きしただけで、樹木をなぎ倒し、美しい庭園を崩壊させそうだ。
 石造りであろう立派な宮殿すら、今は不安で触れられない。


「アリス、アリス。」
 野に蹲(うずくま)った姿勢のアリスの脚に、いつの間にやら現れたビバルディが触れていた。

「わらわを抱き上げてたも?」
 小首を傾げ、無邪気な笑顔でアリスに強請る。アリスは毒気を抜かれて、彼女の仰せに従った。
 これが、ビバルディが女王たる何かだろうか?

「・・・陛下はアリスの現状が、お気にならないのですか?」
「あの子が大きくなった、それだけじゃろ?」
 他に何がある。男達を木偶の様に眺め、差し伸べられたアリスの手に乗って、上昇してゆく。

「ほれ、城下まで見えるぞ、アリス。」
「陛下ばかりずるいです!」
 ペーターはウサギの姿に変化し、ぴょんぴょんとアリスの大腿に登ってきた。
「・・・。」
 アリスはビバルディを落してしまわないようにそっと掌で包んで、立ち上がった。

「アリス、僕が落ち、落ちます。」
「・・・知ってるわ。」
「・・・そんなにべもない!・・・いっ・・・!!」
 エプロンの端に掴まったウサギをピンと弾いた。

「・・・いい気味じゃ。」
 そんな、ビバルディの呟きが聴こえたような気もする。

「アリス、アリス。あの男はどうしようか?」
 悪戯っぽい瞳で、それこそお人形さんのような女王陛下が囁いてくる。

「陛下。俺の耳は都合よくできていて、企みが筒抜けですよ。」
「人聞きの悪い。わらわは何もせぬ。」
 プイと横を向くビバルディ。
「・・・そうよ。ビバルディは何にもしないわ。」
 するのは私。

「・・・私の可愛いつま先はどこかしらね。」
 流石に見失うほどではないが。

「・・・危ないなぁアリス。」
「あら、ごめんなさい。」
 再度、脚を動かす。勿論、落さないように気をつけているが、ビバルディは親指にちゃんとしがみ付いてくれる。・・・いい顔をしている。

「庭なぞ、もう一度作らせれば良い。気にするなアリス。お前の可愛いあんよを見つけることの方が大事じゃ。」

 穢れなき雪白の如きものを麗しの唇から覗かせるが、そこに含まれるのは直黒(ひたぐろ)そのもの。

「それ、お捜し。」
 何やら愉しそうだ。アリスもわけのわからない状態に気分が高揚している。

「あはは、そこっ!」
「・・・。」
「あれ?こっち?」
「・・・。」
「これ、良く見定めよ。」
「・・・陛下。」
「あ、ここだ。」

 樹のかげから赤いものが覗いている。再び、そっと脚をあげようビバルディと二人、目を合わせた。

「・・・アリス。言っておくけどね。君のつま先は、それは大切なものだろう。」
 エースの明るい声がその赤色とは違うところから聴こえる。
 ビバルディが舌打ちをする。

「しかし、だ。」
 また、違うところから声。

「君のスカートの中の秘密とどちらが大切だろうね?」
 言葉の意味を解し、アリスはへたり込む。

 のろのろと下げた腕で、ビバルディも降ろしてしまった。

「これ、この娘をそんなに虐めるでない。」
「あ、陛下ご存知です?これは写真機ですよ。」
「知っておるわ、わらわはハートの女王ビバルディじゃぞ!」

 あれ、なんだか視界が歪む。

「おお、アリス、泣いてはならぬ。」
「これは・・・涙のプールに沈む予兆ってやつですかね?」

 ・・・ぽたん。

続いちゃったよ!?今度こそ終わるか? またも皆様次第。

web拍手レス

■あとがき、というより、なかやすみ■
ペタはウザ可愛いところが好きです。
収集癖があったら、千年の恋も醒めようものですが。
ヤツは無さそうですね。

■設定
小さくしたら、大きく。ベタにイジってみました。
「私の可愛いつま先」は言わずもがな。
盗撮は犯罪なので、エースは撮っていないと思います。騎士だし。
What a pity!は教科書どおりに訳すなら「なんて残念なことなんだ!」ですね。

[08/10/2009] Faceless.