「さて、ここで問題だ。」
ありもしない、カイゼル髭を撫ぜるようなパントマイム。
「巨大、もしくは微小という、いわゆる規格外のものは何故、笑いを誘うのか。」
わざわざ、コツコツと靴音を立てて、ホームズよろしく部屋の中を歩き回る。
「何故かしらね。」
パニックは過ぎた。相槌を打てる程度には。
「それは感嘆という脳体験に訴えかけるからだ。」
尤もな現状分析は結構だ。
「・・・だから?」
「君の掌サイズの状態は笑える。」
言い切った男にアリスはキレた。
「・・・死ねっ!」
「ほほぅ・・・勇気があるねぇ。アリス君。」
「ぎゃー!ばかー!寄るな触るな変態!」
「ははははは。」
「・・・潰れる・・・。」
そうよね。心配なんて、してくれるはずもないんだわ。・・・逆に安心。
「・・・穢れてしまったわ。もうお嫁に行けない。」
「・・・どの口がそんなことを言うのかな?濡れ衣も過ぎると、いかがなものかと思うぜ。」
シナを作るアリスを、人差し指でエースがつっつく。
男の子が人形にそうするように、スカートをぺろんと捲くるのは基本中の基本。
多感な女の子が、感性の大切な友達(リトル・レディ)を扱うのとは、真逆。
好奇心の赴くままに、弄ってくれた。
・・・色々と失ってしまった気分だ。
ぐう。
「・・・こんな時でもおなかが空くのね。最悪だわ・・・死んでしまいたいわ・・・。」
うじうじ、うじうじ。小さい分だけ張れる虚勢も小さくなる。
そんなアリスに、ちょっとだけ優しくエースが声をかけた。
「本能だからな。仕方ないよね。・・・何か用意させようか?」
「こんな姿、誰にも見せたくないんだけれど?」
・・・それに、あなたが出て行って、ここにちゃんと戻ってくる保障は無いわ。
ちろりと、散々なぶり者にしてくれた男を見上げる。・・・頼らなければならない現状に歯噛みしたいが、まずは腹を満たしてからだ。
「ねぇ、その胸ポケットって居心地いい?」
「・・・さぁ?入ってみる?」
「潰さないでね。」
こうして、エースの胸ポケットにアリスは納まることになった。
後のことは追々考えよう。アリスはとりあえずの収まり具合を確認した。
土足で入っていいんだろうか?どこかに彷徨った時に入っていたらしい、ニワトコの葉っぱのくずが入っているから、土足でいいだろう。
良質の厚手の生地で作られたエースのコートは、型崩れすることなく、アリスの身体を締め付けることもない。
「・・・落さないでね。」
エースは口許に微笑みを湛えて、ポケットに手を添えた。
「・・・それにしてもさ。こういう時って、服は縮小の適用外じゃないか?」
不満そうにエースは唇を尖らせる。
「そこは『アリス』だから。って何言っているんだろうねー私。」
「そうか『アリス』だからか、って俺も何言ってるのか分からないなぁ。」
ははははは。・・・はーぁ・・・。
さて、どちらの溜息だろう?
続くか?それとも終わるか? それは皆様次第。
■あとがき、というより、なかやすみ■
勿体無くも、りのさんから頂戴したリクエスト〜
小さくなったエスアリの設定だけのつもりが、短文になりました。
■設定
設定しているうちにちょっと文章にしちゃえと。
本当は、漫画なら最高だったのですが、描いたことがないから、さっぱり分からず。
練習してみるかーと思案中・・・何事も勉強だよねぇと。
アリスのサイズは、ポケットポータブルサイズに。
胸に寄り添うなんて可愛いじゃないですか(笑)
What's happened?よりWhat's happening?で、より気取ってWhat's going on?です。
「何が起こったの?(過去)」→「何が起きているの?(臨場感)」→「いったい何事?(臨場感+認知)」って違いで多分合っているハズ。
はははー言語って多少個人の感覚に依るところも大きいですね。
[06/10/2009] Faceless.